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看護の場で実践されるSSTはどんな訓練?対象になる人や訓練方法について解説!
2023年11月30日
医療に関する用語の一つに「SST」があります。
SSTは、Social Skills Trainingの頭文字をとった略語で、日本語では社会生活技能訓練と訳されます。
しかし、具体的にどのような内容をさしているのか、イメージしにくいかもしれません。
本記事ではSSTとは何か、SSTとはどのようなことをする訓練なのかについて、わかりやすく解説します。
SST(社会生活技能訓練)とは
SST(Social Skills Training)とは、社会生活を送るうえで、色々な困難を抱えている人の対処能力を高め、自分のやりたいことができるよう支援するための方法です。
SST普及協会では、「社会生活スキルトレーニング」の訳語を用いるよう、提唱しています。
SSTで訓練する社会生活スキル、あるいはソーシャルスキルには、他の人とのコミュニケーションの取り方や、薬の服用、家事、生活資金の管理などが含まれます。
SSTの歴史
SSTの原型は1940年代に始まった行動療法にあります。
ストレスなどにより、視野が狭くなってしまった人の行動を自ら柔軟にし、自由に考えるのをサポートする心理療法を認知行動療法といいます。
SSTは認知行動療法とかなり重なる部分を持っています。
20世紀中ごろ、精神科の入患者がピークに達したアメリカで、精神病院を退院した人たちの再発・再入院が社会問題化していました。
そうした問題を解決する手段の一つとして、SSTの導入が始まります。
日本では、1994年に入院生活技能訓練法が診療報酬化されたことで本格的な導入が始まります。
SSTの対象になるのはどんな人?
SSTの対象となるのは以下のような人です。
・統合失調症を患っている人
・人格障害を患っている人
・気分障害を患っている人
・精神状態が比較的安定していても悩みを抱えている人
悩みの内容としては、いつ話せばよいかわからない、どうやって声をかけたらよいかわからない、断わりたいけれども断われないといったものがあります。
SSTの目的
SSTの目的は、対象となる人が社会的スキルを身につけるのを手助けすることです。
思春期に精神的な疾患を発症し、長期間入院している人は、社会経験の不足も相まって、買い物や役所の手続き、最新機器の使い方など現代社会で生活するスキルを持っていないことも少なくありません。
病状が落ち着いて退院できる状態となっても、社会的なスキルが身についていなければ、症状が再発してしまうかもしれません。
SSTを行うことで、社会生活に適応できるようにすることが目的です。
SSTは短期で入退院を繰り返す患者にも必要です。
コミュニケーションが上手くいかなかったり、ストレスにどうやって対処するかがわからないせいで、社会になじめずにいることが少なくありません。
あるいは、無理に社会復帰した結果、症状が再発してしまうケースもあります。
こうした人にとっても、SSTは有効なトレーニングだといえます。
SSTの訓練方法
SSTはどのように行う訓練なのでしょうか。
4つの訓練について解説します。
問題解決の訓練
解決したい問題を一つ取り上げ、その問題を解決するための行動を細かく分析し、複数の段階に分けて訓練を行います。
銀行に振り込みに行くという目標を立てたら、行動を看護師に外出相談することや銀行までの道筋を尋ねること、銀行で行員に話しかけること、ATMで振り込む手順、などのように細かく分割します。
そして、一つひとつの行動をクリアするスモールステップを設定し、着実にできることを増やします。
ロールプレイ
ロールプレイは、1グループ5〜10人程度で行います。
習得したいスキルごとにグループを編成し、他の人に話しかける練習をします。
見慣れたメンバーでロールプレイを行うため、ある程度、落ち着いて練習ができるでしょう。
フィードバック
フィードバックとは、相手の行動に対して改善点や評価を伝えることです。
SSTの場合、相手の成長を促すことが基本となりますので、ほめる・承認するといった正のフィードバックが基本となります。
ダメ出しをして相手の行動を修正するわけではありません。
課題の設定
問題解決やロールプレイングで行ったことをもとに、自ら課題を設定します。
たとえば、先ほどの銀行に行くという目標であれば、病棟の看護師に外出相談をすることが最初の課題となるでしょう。
訓練・練習で終わらせるのではなく、実際に訓練した内容を実践することで、自信が持てるようになるでしょう。
まとめ
今回は精神医療の分野を中心に行われているSSTについて解説しました。
精神病院に入院していると、少なからず、社会と隔絶してしまいます。
そのままの状態で退院して社会復帰しても、入院時とのギャップで上手くいかないかもしれません。
SSTの訓練を経ることで、本人の自信を深め、社会復帰後も精神的に安定できる可能性が高まるでしょう。
最近は、VR(バーチャルリアリティ)を活用したSSTプログラムも開発されています。
遠くない日に、多くの病院で実践できるかもしれません。